最近の論文より

私の最近(1999年以降)の論文のコメント付きリストです。

[2021-4] A new geometric condition equivalent to the maximum angle condition for tetrahedrons
by Hiroki ISHIZAKA, Kenta KOBAYASHI, Ryo SUZUKI, Takuya TSUCHIYA

Computers & Mathematics with Applications , 99 (2021) 323--328, DOI: /10.1016/j.camwa.2021.08.017
arXiv:2102.04767

三角形Kの3つの内角がある定数C(< π)よりも小さいとき、Kは 定数Cについて最大角条件 (maximum angle condition)を満たす といいます。三角形の最大角条件は、三角形上の関数補間の誤差評価にとって非 常に重要です。正弦定理により、三角形Kが最大角条件を満たすための必要十分条 件は、「R_K/h_Kがある定数以下である」ことがわかります。ただし、 R_KはKの外接半径であり、h_KはKの直径です。

四面体についても最大角条件を考えることができます。四面体Tのすべての面の内 角とすべての2面角(面と面がなす角)が定数C(< π)よりも小さいとき、T は定数Cについて最大角条件を満たすといいます。 四面体上の関数補間の誤差評価についても、最大角条件が重要であることが知 られています。この論文では、四面体Tに対して

   R_T = h1*h2*h_T*h_T/|T|
と定義すると、Tが最大角条件を満たすための必要十分条件は、 「R_T/h_Kがある定数以下である」ことを示しました。ただし、 h_1 ≦ h_2 ≦ ・・・≦ h_6 = h_TはTの6つの辺の長さで、 |T|はTの体積です。つまり、四面体に対しても、三角形の場合とよく似た 状況が成り立つことがわかりました。このR_Tは、論文[2021-1]で導入されたも のです。三角形の場合の外接半径のように、R_Tについても 幾何学的特徴付けが出来ればいいのですが、現時点ではR_Tの正体はまだ不明で す。


[2021-3] A robust discontinuous Galerkin scheme on anisotropic meshes
by Takahito KASHIWABARA, Takuya TSUCHIYA

Japan Journal of Industrial and Applied Mathematics, 38 (2021) 1001--1022, DOI: /10.1007/s13160-021-00474-y
arXiv:2010.09312

異方的なメッシュ上でもロバストな不連続Galerkinスキームについての論文です。 不連続Galerkin法は通常のGalerkin有限要素法の拡張で、要素間で不連続な 関数を使って微分方程式の解を近似します。要素間で不連続な関数を用いるので、 ペナルティ項を用いて要素境界上の不連続部分を無理やり”引っ付けて”います。 数値実験をするとすぐわかるのですが、要素が潰れていくにつれてペナルティパラメー タを大きくしていく必要があります。つまり通常の不連続Galerkin法は、その 意味で(つまりペナルティパラメータを固定したスキームとしては) 異方的なメッシュ上でロバストではありせん。

そこで、異方的メッシュ上でもスキームがロバストになるようにペナルティ項の 定義を変更することを考えました。なぜ通常の不連続Galerkin法が 異方的メッシュ上でロバストでないのかの原因を考えると、ペナルティ項 の定義にある$1/h_f$($h_f$は単体要素のファセット(辺または面)$f$の 直径)にあるだろうことに思い当たります。この量はいわゆるトレース不等式 から出てくるので、この量のかわりに潰れた単体に対しても成り立つ一般の トレース不等式を使うことを思いつきました。うまくペナルティ項を定義してや ると、教科書のある不連続Galerkin法の誤差評価をなぞっていくだけで、 異方的メッシュ上で成り立つ誤差評価を得ることができました。また、数値実験で 得られた誤差評価が成り立っていることを確かめました。 実は、不連続Galerkin法をちゃんと勉強したのは、最近のことです。 東京大学の柏原崇人先生にいろいろ教えてもらいながら、楽しく研究できまし た。


[2021-2] Crouzeix--Raviart and Raviart--Thomas finite-element error analysis on anisotropic meshes violating the maximum angle condition,
by Hiroki Ishizaka, Kenta Kobayashi, Takuya TSUCHIYA

Japan Journal of Industrial and Applied Mathematics, DOI: /10.1007/s13160-020-00455-7
arXiv:2006.00631

[2021-1]の続編です。


[2021-1] General theory of interpolation error estimates on anisotropic meshes
by Hiroki ISHIZAKA, Kenta KOBAYASHI, Takuya TSUCHIYA

Japan Journal of Industrial and Applied Mathematics, 38 (2021) 163--191, DOI: /10.1007/s13160-020-00433-z
arXiv:2002.09721

2020年度現在、愛媛大学理工学研究科の博士課程後期2年生の石坂さんの論文で す。(形状正則性が成り立たない)異方性メッシュ上の関数の補間誤差について 統一的な理論を提案しています。私が特に大事だと思うのは、四面体上の補間に 関して[2020-1]で提案されたprojected circumradius と異なる量を2つ定義した ことです。この2つの量は、projected circumradiusよりずっとシンプルで、数 値計算も容易です。この2つの量は互いに同値であることが論文で示されていま すが、projected circumradiusとの関係は今のところよくわかっていません。今 後の課題です。


[2020-2] Reorganizing topologies of Steiner trees to accelerate their eliminations,
by Aymeric GRODET, Takuya TSUCHIYA

Discrete Mathematics, Algorithms and Applications, 12 (2020) 2050003 (21 pages), DOI: /10.1142/S1793830920500032
arXiv:1511.03407

私の学生だったGrodet君とSteiner問題についての論文を書きました。 元の論文は2015年ごろ書いていましたが、やっとアクセプトされました。

「2次元以上のEuclid空間内に複数の点(regular pointとよばれ ます)が与えられたとき、それらをつなぐ 長さ最小の木を求めよ。ただし、複数個の点を付加してもよい。」

というのが有名なSteiner問題です。 Steiner問題の難しさは、何個点を付加するか(付加する点はSteiner pointと 呼ばれます)が未知で、さらにSteiner pointとregular pointをつなぎ木を構成する場 合の数が、点の数に対して指数関数的に増えていく事にあります。このため、 Steiner問題はNP困難な問題になります。 Steiner point とregular pointをつなぎ木を構成する情報(つまり木の隣接行 列です)を、Steiner問題業界では``topology''といいます。

Steiner pointの数を決めtopologyを決まれば、Steiner point の位置は、Newton法などを用いて数値計算で求めることができます。 このSteiner pointの位置を求める計算の際に、Steiner pointが他のSteiner pointやregular pointにぶつかり、それ以上計算が遂行できないことがあります。 この場合は、topologyを少し変更すると、うまくいく場合があることが 知られていました。この論文では、最適なtopologyのeliminationの際に、 そのようなtopologyの変更を組織的に使うことを提案しました。 これにより、eliminationが加速することを、計算機実験で確かめました。


[2020-1] Error analysis of Lagrange interpolation on tetrahedrons,
by Kenta KOBAYASHI, Takuya TSUCHIYA

Journal of Approximatin Theory, 50 days' free access, 249 (2020) 105302, DOI: 10.1016/j.jat.2019.105302
arXiv:1606.03918

一橋大学の小林健太先生との一連の共同研究の最新の論文です。
[2014-1], [2015-3], [2016-1]では、三角形上のLagrange補間の誤差評価を 三角形のShape-Regularity条件を仮定せず行いました。 この論文では、その結果を四面体のLagrange補間の場合に拡張しま した。 Shape-regularity条件を課さない場合、三角形上のLagrange補間の誤差 は、三角形の外接半径(=外接円の半径)と三角形の直径を使って評価できます。 四面体上のLagrage補間の誤差をShape-Regularity条件を課さずに評価する場合、 四面体のどのような量をつかうべきだろうかということが問題になり、長い間試 行錯誤しました。

一番単純なアイディアは「四面体の外接球の半径」を使ったらどうかというもの でしたが、これではダメだという反例を小林さんがすぐに見つけてしまいました。 いろいろ考えたのですが、四面体上のLagrange補間の誤差は、四面体の 射影外接半径 (projected circumradisu) と直径で評価できるという事がわかりました。四面体の射影外接半径と いう量は、この論文で初めて定義されたもののようです。


[2018-2] Error analysis of Crouzeix--Raviart and Raviart--Thomas finite element methods,
by Kenta KOBAYASHI, Takuya TSUCHIYA

Japan Journal of Industrial and Applied Mathematics, 35 (2018) 1191 -- 1211, DOI: 10.1007/s13160-018-0325-9
arXiv:1712.06242

一橋大学の小林健太先生との一連の共同研究の最新の論文です。
2次元有界多角形領域上のPoisson問題に対するCrouzeix-Raviart有限要素法 (以下、CR有限要素法と書きます)は、意外と良い性質を持つことが知られてい て、特に工学の分野でも好まれる場合があるようです。しかし、CR有限要素空間 は通常のSobolev空間の部分空間にならず、その意味で 非適合要素 (non-confirming elements)と呼 ばれています。そのため、Ceaの補題のような簡単な補題が使えず、その誤差評 価は結構面倒です。

この論文では、正則性条件が成り立たないような三角形分割を用いたCR有限要素 法とRaviart-Thomas有限要素法(以下、RT有限要素法と書きます)の誤差を詳し く解析しました。

混合型変分形式を用いるRT有限要素法は、有限要素空間が定式化に用いられる Sobolev空間の部分空間になり、その意味で適合要素です。(ただし、得られる 近似解は、一般的に三角形要素の辺上で不連続です。)そのため、私達が開発し てきたBabuska-Azizのトリックを用いた誤差解析が可能で、RT有限要素法の誤差 を三角形の外接半径を用いて評価することに成功しました。

1980年代から、CR有限要素法とRT有限要素法の間には、密接な関係があることが わかっています。この関係を使うと、得られたRT有限要素法の誤差からCR有限要 素法の誤差がただちに得られます。 CR、およびRT有限要素法の誤差を、正則性条件を仮定しない三角形分割上で 与えたのは、この論文が初めてです。


[2018-1] Finite element approximations of minimal surfaces: algorithm and mesh refinement
by Aymeric GRODET, Takuya TSUCHIYA

Japan Journal of Industrial and Applied Mathematics, 35 (2018) 707 -- 725, DOI: 10.1007/s13160-018-0303-2
arXiv:1706.09672

極小曲面の有限要素近似について議論した論文です。いままで私が書いた極小曲 面や等角写像の論文では、うまく計算できた数値例しか紹介していませんでした。 実は、実際計算してみるとかなりの割合で有限要素解が「潰れて」しまい、き ちんとした数値解が得られません。対策としては、adaptive mesh refinement を導入すればうまくいくだろうと思っていましたが、技術不足で自分ではできま せんでした。そこで、大学院生のGrodet君にadaptive mesh refinementのプログ ラムを書いてもらい、その効果を確かめてみました。
実際にadaptive mesh refinementを導入してみると、すべての例について綺麗な 有限要素解が得られることがわかりました。また、adaptive mesh refinement が「境界が角を持つ場合」、「境界の一部が自由境界になる場合」にも有効であ ることがわかりました。さらに、シャボンの液に浸した枠を引き上げる様子のア ニメーションを作ることもできました。
理論的には、境界の一部が自由境界になる場合について、有限要素解の収束を厳 密に証明しました。


[2017-1] Approximating surface areas by interpolations on triangulations
by Kenta KOBAYASHI, Takuya TSUCHIYA

Japan Journal of Industrial and Applied Mathematics, 34 (2017) 509 -- 530, DOI: 10.1007/s13160-017-0253-0
arXiv:1610.06054

[2015-1]の続編です。曲面の面積を三角形分割上の関数補間で近似する問題を 考えました。[2015-1]では曲面の滑らかさのとして $W^{2,1}$ 程度を仮定しま したが、この論文では曲面はLipschitz連続である(つまり$W^{1,\finty}$)とい う仮定のもとで議論しました。Lagrange補間の場合は、三角形分割の幾何学的条 件として最大角条件 (maximum angle condition) のもとでLagrange補間の曲面 積が元の曲面の曲面積に収束するという100年前のYoungの定理の別証明を与えま した。

さらに、Crouzeix-Raviart補間での曲面積の近似は、 三角形分割の幾何学的形状にまったく条件も課さなくても もとの曲面積に収束するという事を示しました。 このCrouzeix-Raviart補間の結果は、従来の有限要素法の理論の常識に反するも ので、私達も驚きました。 以上の結果について数値実験を行いましたが、特にCrouzeix-Raviart補間に よる近似については、驚くほどきれいに理論的結果と数値例の結果が一致しました。


[2016-2] First and second Hadamard variational formulae of the Green function for general domain perturbations
by Takashi SUZUKI, Takuya TSUCHIYA

Journal of Mathematical Society of Japan, 68 (2016) 1389--1419, DOI: 10.2969/jmsj/06841389

境界が十分滑らかな有界領域上でDirichlet境界条件が0とした場合の LaplacianのPoisson問題の解は、Green関数を使って書き表すことができます。 Hadamardは領域の境界がわずかに摂動した場合の、LaplacianのGreen関数の変分を考えまし た。このように、領域の摂動に関する変分を Hadamard変分といいます。 このLaplacianのGreen関数のHadamard変分は、Hadamard, Garabedien-Schifferらによって、第一変分、第二変分が計算されました。 彼らが考えた摂動は、境界を法線方向に摂動した法線摂動(normalperturbation) で、さらに境界と摂動は、非常に滑らかであるという仮定のもとでの計算でした。
この論文では、もっとも一般的な領域の摂動を考え、さらに境界の滑らかさも 先行研究よりはかなり弱い仮定のもとで、LaplacianのGreen関数の第一変分、第二変分 を計算しました。また、計算の途中で出てくる種々の微分が存在することも、 きちんと証明しました。結果として、有名なGarabedian-Schifferの変分公式を、 60年ぶりに拡張することに成功しました。


[2016-1] Extending Babu\v{s}ka-Aziz's theorem to higher-order Lagrange interpolation
by Kenta KOBAYASHI, Takuya TSUCHIYA

Applications of Mathematics 61 (2016) 121--133, DOI: 10.1007/s10492-016-0125-y
arXiv:1508.00119

[2015-3]の内容を補足する論文です。この論文では、直角二等辺三角形を垂直に 潰していく場合、高次Lagrange補間の誤差評価は悪化しないことを証明しました。 よって、どんなに潰れた直角三角形においても、Lagrange補間に対して標準的 な誤差評価が成り立ちます。
同様な事は多くの論文で議論されていますが、この論文の特徴は、1976年に発表 された論文で提示された(この種の理論の創始者である) Babu\v{s}ka-Azizの技 巧を直接拡張した方法を使っていることです。そのために、2変数関数の差分商 (difference quotient)を議論を使いました。
論文を書いていると、同じ技法が"直角四面体"に適応できることにも気づきまし た。つまり、"直角四面体"を垂直に潰していく場合、高次Lagrange補間の誤差評 価は悪化しません。これについても言及しました。ただし、"直角四面体"の場合 は、L^p-空間のpに制限が付きます。これは、Sobolevの埋め込み定理と、 四面体内の線分に関数を制限するtrace作用素の連続性からくるものです。
Babu\v{s}kaは私の学位論文の指導教員でした。少しは、Babu\v{s}ka先生に恩返 しができたような気がします。


[2015-3] A priori error estimates for Lagrange interpolation on triangles
by Kenta KOBAYASHI, Takuya TSUCHIYA

Applications of Mathematics, 60 (2015) 485--499, DOI: 10.1007/s10492-015-0108-4
arXiv:1408.2179

[2014-1], [2015-1]の続きです。[2014-1]では2次元の三角形上の1次Lagrange補 間の誤差について議論しました。その際、誤差評価においては、三角形の外接円 の半径が重要であるという事を指摘しました。この論文では、三角形上の高次の Lagrange補間の誤差について議論し、[2014-1]の結果を拡張しました。 そのために、次の2つの手法を組み合わせました。

(1) 1976年のBabuska-Azizの結果を、高次Lagrange補間の場合に拡張しました。 (ページ制限のせいで、証明はこの論文では記述できませんでした。証明の細部 については、[2016-1]をご覧ください。)
(2) 2010年のLiu-Kikuchiの論文の証明を、行列のKronecker積を使って書き直し ました。また、Liu-Kikuchiの結果を外接円の半径を使って表現できることを指摘しま した。

この(1), (2)より、[2014-1]の結果のより簡単な別証明が得られました。また、 Liu-Kikuchiの論文の証明をKronecker積を使って書きなおしたおかげで、上の(2) の結果は高次Lagrange補間の場合に簡単に拡張できました。その結果、高次 Lagrange補間の誤差を、外接円の半径と最長辺の長さで統一的に評価することができました。


[2015-2] A note on convergence and a posteriori error estimates of the classical Jacobi method
by Takuya TSUCHIYA, Kensuke AISHIMA

Nonlinear Theory and Its Applications, 6 (2015) 391--396, DOI: 10.1588/nolta.6.391

実対称行列の固有値問題に対する古典的Jacobi法の収束について議論した論文です。 もう10年以上前ですが、数値解析の講義の準備のために山本哲朗先生のご著書

   山本哲朗著 「数値解析入門[増訂版]」 サイエンス社
のJacobi法の収束の部分を読んでいると、ある部分の証明を簡略化することができることに 気づきました。山本先生のお勧めもあり論文にすることにしたのですが、 数値線形代数は私の専門ではないのでなかなかうまくいかず、苦労 しました。そこで、数値線形代数の専門家の相島先生にご協力をお願いすること にし、原稿を見なおしていただいたおかげで、なんとか アクセプトされました。 相島先生を始め、関係者の方々にお礼申し上げます。ありがとうございました。


[2015-1] On the circumradius condition for piecewise linear triangular elements
by Kenta KOBAYASHI, Takuya TSUCHIYA

Japan Journal of Industrial and Applied Mathematics, 32 (2015) 65--76, DOI: 10.1007/s13160-014-0161-5
arXiv:1308.2113

[2014-1]で、三角形上の連続関数の1次補間において、三角形の外接円 の半径が重要だとわかりました。それについて調べているうちに、学生時代に勉 強した「曲面の面積の定義とSchwarzの反例」を思い出しました(例えば、高木貞治 「解析概論」を見てください)。そこで、Schwarzの反例、いわゆる Schwarzの提灯 (Schwarz's lantern)に出てく る三角形の外接半径を計算してみると、なんと

「Schwarzの提灯の面積が円柱の側面積に収束する」ことと
「Schwarzの提灯の三角形の外接半径が0に収束する」ことが同値である

がすぐわかりました!! さらに、円柱の側面をグラフとするような関数 が解であるPoisson問題を、Schwarzの反例のような三角形分割をつかって区分的 1次有限要素法で近似すると、その誤差はまさに[2014-1]で証明した評価式の通 りの挙動を示すことが確認できました。これからわかることは、外接半径条件は 平面上の領域の三角形分割において、かなり本質的な条件であるということです。

岩波数学辞典によると、21世紀の現在、 曲面の面積の(曲面の微分可能性を使わない)「組み合わせ的な」 定義なかでもっとも一般的なものは、Lebesgueによる定義だそうです。 通常の教科書にはあまり書かれていませんが、例えば1937年のSaksの 本を見てください。

  S. Saks, Theory of the Integral, Warszawa-Lwow, 1937,
  reprinted by Dover 2005.
この論文で、外接半径条件がLebesgueによる曲面の面積の定義、および曲面の面 積に関するTonelliの定理と密接に関係していることを指摘しました。ごく簡単 なことですが、いままで100年以上だれにも気づかれず見過ごされていたよう です。さらに、
  T. Rado, On the Problem of Plateau, Springer, 1933, reprinted by Chelsea, 1951
を読んでいると、曲面積に関する議論の中で、三角形の最小角条件と最大角条件 が1910年の終わりから20年代にかけすでに議論されていることを知り、本当に驚き ました。「歴史は繰り返す」(History repeats itself) とはこういうことなのですね。


[2014-2] Finite element approximation of conformal mappings to unbounded Jordan domains
by Takuya TSUCHIYA

Numerical Functional Analysis and Optimization, 35 (2014) 1382--1397, DOI: 10.1080/01630563.2013.837482

[2001-4]の続編です。 2次元のユークリッド空間、つまり平面内にJordan閉曲線があるとします。 [2001-4]では、単位円板からJordan閉曲線内部の領域への等角写像の有限要素 近似と、その収束について議論しました。
単位円板からJordan閉曲線の外部領域への等角写像は、そのエネルギー(=領域 の面積)は有界でないので、[2001-4]の議論が使えません。しかし、外部領域を リーマン球面(=2次元球面)上へ立体射影(stereographic projection)で射影した 領域を考えるとうまく行く事に気づきました。鍵となるのは、立体射影は平面か らリーマン球面への等角写像であるということです。つまり、単位円板からリー マン球面上の領域への等角写像が得られれば、それを立体射影の逆で平面上に引 き戻せば、外部領域への等角写像が得られることになります。リーマン球面上の 外部領域の像は有界なので、単位円板からその像への等角写像のエネルギーも有 界です。よって、[2001-4]の議論がほとんどそのまま使えます。
多くの数値例を与えました。


[2014-1] A Babu\v{s}ka-Aziz type proof of the circumradius condition
by Kenta KOBAYASHI, Takuya TSUCHIYA

Japan Journal of Industrial and Applied Mathematics, 31 (2014), 193-210, DOI: 10.1007/s13160-013-0128-y
arXiv:1306.2097

本論文で 日本応用数理学会2015年度論文賞(JJIAM部門) をいただきました。関係者の皆様に感謝いたします。

三角形上の連続関数の1次補間とその誤差解析は、数値解析学、特に有限要素法 の誤差解析にとって非常に重要なものです。研究の歴史は長く、その最初のもの は1968年のZlamalの論文であるとされています。Zlamalは、三角形のすべての内 角はある正定数より大きいという最小角条件 (the minimum angle condition)を仮定した上で1次補間の誤差評価式を与えまし た。その後1976年にBabuska-AzizとJametが独立に、三角形のすべての内角はπ より小さいある正定数より小さいという 最大角条件 (the maximum angle condition) の元でも、同様な評価式が成り立つことを示しました。
それ以後長い間、最大角条件が最も一般的な条件と信じられてきましたが、 2011年頃共著者の一橋大学の小林健太先生が、 小林の公式 (Kobayashi's formula)と呼ばれ る画期的な公式を発見しました。小林の公式から直ちにわかることは、本質的なのは三角形の 最小角や最大角ではなく、その外接半径 (circumradius) であるという事です。三角形の外接半径を使った1次補間の誤差 評価式を外接半径条件 (the circumradius condition) と呼ぶことにしました。
小林の公式は画期的なものですが、その証明は長く、また精度保証付き 数値計算が必要です。そこで、精度保証付き数値計算を使わな い(紙とえんぴつだけの)外接半径条件の証明を、小林先生と協力して見出しました。 その証明は、基本的にBabuska-Azizの手法だけを使った初等的なものです(計算は かなり複雑ですが)。
この論文の影響は、かなり大きなものになるであろうと感じています。 小林先生、ありがとうございました。


[2011-2] Weak formulaton of Hadamard variation applied to the filtration problem
by Takashi SUZUKI, Takuya TSUCHIYA

Japan Journal of Industrial and Applied Mathematics, 28 (2011), 327-350

[2005-2]の続編です。 浸透問題、あるいはダム問題を支配する汎関数を考えます。ダム問題のような自 由境界問題を数値的に解こうとする場合、境界を少しずつ動かします。その際、 自由境界問題を支配する汎関数(多くの場合、ある境界値問題の解を使って定義 されます)が、領域の摂動に対してどのように変化するかを正確に把握する必要 があります。そのような境界の摂動に関する変分を、 Hadamard変分 (Hadamard variation)といいま す。この論文では、ダム問題の変分原理を定義する汎関数のHadamard第一変分を 求め、それが正しいことを数値実験で確かめました。 さらに、求められた第一変分を使い、名古屋大学の畔上先生が提案された 力法 (traction method)をダム問題に適応し ました。数値実験では、非常にうまくいくことが確かめられました。ダム問題の 解に対する反復スキームは数多く提案されていますが、きちんとした数学の裏づ けのあるスキームはたぶんこれが初めてだと思います。


[2011-1] A combined scheme for computing numerical solutions of a free boundary problem
by Nuha Loling Othman, Takashi SUZUKI, Takuya TSUCHIYA

International Journal of Mathematics and computers in Simulation, 5 (2011), 53-60


[2005-2] A matrix theoretic approach to finite element error analysis by Yamamoto's principle,
by Sae ISHIOKA, Takuya TSUCHIYA

Advances of Mathematical Sciences and Applications, 100 (2005), 537-564.

[2003-2]の続編です。 1次元有界区間上の一般的な2点境界値問題 の区分的2次有限要素近似について考察しました。 この場合、剛性行列は5重対角行列になります。 石岡さんが、この剛性行列の逆行列を陽に表す公式を 発見しました。それを使うと、Yamamoto's principle 「境界値問題を離散化した場合、剛性行列の逆行列は、 対応する境界値問題の Green 関数の近似になっている」 が成り立つことが確かめられます。この Yamamoto's principle を使って、係数関数が有限個の不連続点を持 つ場合も、知られているすべての誤差評価と超収束が得 られることを示しました。
ここでの経験を通して、 有限要素法の誤差解析に必要なことは、「各要素上で、 いろいろな関数の積分が精度良く近似できる」ことで あることがわかってきました。近似は、あくまで要素ごとに 近似できればいいので、与えれたデータが不連続でも、 それを要素ごとに精度よく近似できるように三角形分割が できるのなら、有限要素解の精度は保たれるであろうことが 予想できます。このことは、2次元有界領域での楕円型境界値 問題に対する有限要素近似でも成り立つようです。


[2005-1] Convergence analysis of trial free boundary methods for the two-dimensional filtration problem,
by Takashi SUZUKI, Takuya TSUCHIYA

Numerische Mathematik, 100 (2005), 537-564.

「ダム問題 (dam problem)」あるいは「浸透問題 (filtration problem)」 と呼ばれる多孔質媒質内の浸透流に関する問題に対する 数値解法について議論しました. 浸透流は流速が遅いので,その速度ポテンシャルは調和関数と 仮定することができます(媒質が均等な場合). しかし,「ダム問題」で難しいのは,浸透流の表面が未知なことです. 速度ポテンシャルは浸透流の表面では,Dirichletタイプと Neumannタイプの両方の境界条件を満たす必要があります. 逆にいうと,2つの境界条件を満たすことができるように, 浸透流の表面が決定されます. このような,偏微分方程式を考えている領域自体が未知な 境界値問題を自由境界問題と呼びますが,「ダム問題」は 自由境界問題の一番基礎的な例で,1970年代から80年代にかけて さかんに研究されました.現在では,解の存在,一意性等は, かなり一般的な場合にもわかっていますが,一般的な場合に対す る数値スキームの解析は驚くほど遅れていました.
この論文では,ダム問題に対するもっとも直感的な解法である 「試行境界法 (trial free boundary methods)」の 収束の証明について,その理論的基礎を確立しました. 試行境界法の収束については,70年代から証明が試みられていましたが だれも成功せず,関心のある研究者の間で懸案になっていました. まだ未解決な部分はありますが,重要な基礎固めはできたと 自負しています.
[注1] この論文で扱っている問題を,日本語では (あるいはヨーロッパでも)普通「ダム問題」と いいますが,英語の dam (ダム)は, damn (辞書を見てください)と まぎらわしいので,英語を母国語としている人は, 「filtration problem(浸透問題)」という人が多いようです. 我々の英語の表題は,それに従いました.
[注2] 私(土屋)は,大学院の修士論文 で「ダム問題」を扱いました.その時提案した反復スキームは,計算機上では うまく動きましたが,その収束を証明することは結局できませんでした. 今回,重要な部分の理論的解析をすることができ, 20年ぶりに宿題を片づけることができた気分です (まだ問題が完全に解決したわけではありませんが).


[2003-3] Precise finite element error analysis by Yamamoto's explicit inversion formula for tridiagonal matrices -- An extension of Babuska-Osborn's theorem,
by Takuya TSUCHIYA

Numerische Mathematik, 94 (2003), 541-572.

1次元有界区間上の2点境界値問題を,有限差分法あるいは 区分的1次有限要素法で離散化すると,得られる有限次元 線形方程式の係数行列は,3重対角行列になります. 愛媛大学名誉教授, 早稲田大学教授の山本哲朗先生は,この3重対角行列の 逆行列の公式を導きだし,さらに係数行列の逆行列と 元の境界値問題の Green 関数との間に密接な関係が あることを発見しました.この密接な関係を,しばしば Yamamoto's Principle (「山本の原理」)と呼びます. この論文では,Yamamoto's Principle を有限要素法の 解析に応用することを考えました.
3角形分割を細かくしていくと,有限要素解は真の解に 適当なノルム(例えば H1 ノルム)で収束します. それ以上の誤差解析を行う場合,通常様々なデータの滑らかさを 仮定します.Babuska-Osborn は,データの滑らかさを 全く仮定しない場合に,有限要素解の誤差についてどのような 事が主張できるかを調べました.その結果彼らは, データの滑らかさの仮定なしでは, 有限要素解の収束以上の事は主張できないことを, 例を構成することで示しました. この論文では,Babuska-Osborn の結果は,より一般的な 2点境界値問題の場合に拡張できることを, Yamamoto's Principle を使って示しました.


[2003-2] Yamamoto's principle and its applications to precise finite element error analysis,
by Takuya TSUCHIYA, Kazuki YOSHIDA, Sae ISHIOKA

Journal of Computational and Applied Mathematics, 152 (2003) 507-532.

(出版の順番が前後しますが)[2003-3]の続編です. 1次元有界区間上の一般的な2点境界値問題 の区分的1次有限要素近似について考察しました. 有限要素法の誤差解析では,通常,主要項の係数関数は一様に正でかつ 必要なだけ滑らかと仮定します. [2003-3]では,この係数関数が至るところ不連続な 場合を考えました.この論文では,有限個の不連続点を 持つ場合について考察しました.ただし,不連続点の 間は適当に滑らかであることを仮定します. また,一様に正ということは仮定しません. つまり,考えている2点境界値問題の楕円性は 仮定しません.Lax-Milgramの定理を使う関数解析的な アプローチでは,このような問題を扱うことは難しいと 思いますが,Yamamoto's Principle を使うと,この場合でも 誤差解析が可能になります.
全ての不連続点が,区間の細分の際の節点になっていると いうことさえ仮定すれば,通常の有限要素解析で知られている すべての誤差限界が成り立つことを,Yamamoto's Principle を 使って示しました.Post processingにより,節点で 真の解の微分値が精度良く近似できることも示しました.


[2003-1] Finite element approximation of H-surfaces,
by Yuki MATSUZAWA, Takashi SUZUKI, Takuya TSUCHIYA

Mathematics of Computation, 72 (2003) 607-617.

3次元のユークリッド空間内に与えられた Jordan 曲線を 考えます.2次元の単位円板から3次元への曲面で, 平均曲率が至るところ定数 H で,かつ 単位円板の境界,つまり単位円を与えられた Jordan 曲線に homeomorphic に写す写像を求めよという問題を, 一番単純な区分的1次有限要素法を使って近似しました. このような曲面を H-surface と呼びます.
曲面が H-surface であるための必要十分条件は, これがある汎関数の停留点になっていることです. Hildebrandt は,1970年の論文で,もし |H|R < 1 が成り立っていれば,その汎関数の最小値を達成する 曲面が存在することを示しました.ただし,R は,Jordan 曲線の半径です.この解を特に Hildebrandt 解と呼びます.
ここでは,Hildebrandt 解に対応する有限要素解 (「有限要素 Hildebrandt 解」と呼びます) を定義し, 単位円の三角形分割を細かくしていくとき, 有限要素 Hildebrandt 解が,真の Hildebrandt 解に ある意味で収束することを示しました. また,多くの数値例を与えました.


[2002-2] Finite element approximations of parametrized strongly nonlinear boundary value problems,
by Takuya TSUCHIYA

Japan Journal of Industrial and Applied Mathematics, 19 (2002) 377-398.

論文 [1999], [2000] の続きです. パラメータつき強非線形楕円型境界値問題に対する有限要素法の誤差に ついて,議論した論文です.この場合,一つ一つの解ではなく, 解の集合を扱わなくてはなりません.パラメータの数が1つの時は, 大雑把に言って,解の集合は無限次元 Banach 空間の中のいくつかの 曲線の集まりになります.この論文では, 解曲線の上の各点で 境界値問題から定義される非線形作用素が isomorphism になる 場合について(そのような解曲線を regular branch (正則な解曲線) と呼びます), その有限要素近似について議論しました. 領域とその三角形分割および有限要素空間が適当な仮定を満たすとき, 三角形分割が十分細かければ,regular branch の近傍に 有限要素解の branch が局所的に一意に存在し,またその誤差も評価できるという定理を 証明しましました.パラメータを付け加える bordering という手法を 使えば,regular branch でない turning point の周辺の branch に おいても同様の定理が成り立つことも示しました.
実は,この論文は,論文 [2001-3] より前に書いたものですが, いろいろな事情で雑誌に載るのが遅れてしまいました. [1999] => [2002-2] => [2001-3] の順番でお読み下さい.


[2002-1] Finite difference, finite element and finite volume methods applied to two-point boundary value problems
by Qing FANG, Takuya TSUCHIYA, Tetsuro YAMAMOTO

Journal of Computational and Applied Mathematics, 139 (2002) 9-19.

1次元の有界区間上で定義された,-(p(x)u'(x))'=f(x) という 簡単な方程式に,端点での境界条件を加えた2点境界値問題を考えます.これ に対する主だった3つの数値解法,つまり有限差分法,有限要素法, 有限体積法の誤差について考察しました.この3つの数値解法は 異なった考え方に基づいて定義されるもので,その誤差解析も それぞれ独立に行われてきました.
ところが,3重対角行列の逆行列の Yamamoto の陽的公式を使うと, これらの数値解法はいずれも,Green 関数で定義される 積分作用素を,何らかの方法で近似しているものだということがわかり, 数値解法やその誤差解析に対する統一的な理解が可能になりました. 方程式は非常に単純ですが,それでも数値例を通して予想されながら 従来の方法では証明することができなかった誤差限界がいくつかあります. この論文では,それらを簡単な考察で示すことができました.


[2001-4] Finite element approximations of conformal mappings
by Takuya TSUCHIYA

Numerical Functional Analysis and Optimization, 22 (2001) 419-440.

2次元の Euclid 空間の中の Jordan 閉曲線で囲まれた領域 (このような領域を Jordan 領域といいます)を考えます. Jordan 領域は当然単連結ですので,Riemann の写像定理より, 単位円をその Jordan 領域に写す等角写像が存在します. この論文では,その等角写像を有限要素法で近似することを 考えました.
そのために,単位円を Jordan 領域に写す写像が 等角になるための変分原理を考えます. (この変分原理は少なくとも20世紀の前半には知られていたと 思うのですが,なぜか複素関数の教科書に書いてあるのを 見たことがありません.この論文を見るか, 微分幾何の教科書で探してください.) 単位円を三角形分割し,その上の区分的1次写像を考えます. そのような区分的1次写像のある集合内で,ある汎関数 (Dirichlet 積分です) を最小にするものを,有限要素等角写像と定義します.
等角写像を一意に決定するため条件を3通り 考え,それぞれについて有限要素等角写像が真の等角写像に, ある意味で収束することを示しました. また,多くの数値例を与えました.


[2001-3] Finite element analysis for parametrized nonlinear equations around turning points
by Takuya TSUCHIYA

Journal of Computational and Applied Mathematics, 132 (2001) 255-276.

パラメータつき非線形楕円型境界値問題に対する有限要素法の誤差について, 議論した論文です.この場合,一つ一つの解ではなく,解の集合を扱わなく てはなりません.パラメータの数が1つの時は,大雑把に言って,解の集合は 無限次元 Banach 空間の中のいくつかの曲線の集まりになります. 数学的に言うと,非線形境界値問題から定義される Banach 空間の間の非線形写像の Frechet 微分が, 同型写像 (isomorphism) でなくなっているような点を特異点 (singular points) といいます.特異点には, 「分岐点 (bifurcation points)」(解曲線が交わっている点です)や, 「返り点 (turning points)」(解曲線がそっくり返っている点です) などがあります.
この論文では,turning points の周辺における 有限要素法の誤差について議論しています. Turning points の周辺では,単にパラメータをある値に 固定し計算するという方法では,計算がうまくいかなくなります. つまり,反復法による計算が収束しなくなったり,収束するに しても,誤差が非常に大きくなったりします.
通常この困難を回避するため,パラメータを未知数とみなし, さらに元の方程式にもう一つ方程式を加え,拡大した方程式系を考える というテクニックを使います.(この手法を 「bordering (縁付け法)」と いうようです.) Turning point の周辺で bordering を使うと,有限要素解の誤差は,

「パラメータの誤差」+「関数の誤差」

という形で表されます.ところが実際の多くの計算においては, 「パラメータの誤差」は「関数の誤差」よりずっと小さいことが 観察されます.この論文では,そのからくりを明らかにしました.


[2001-2] Recovered derivatives for the Shortley-Weller finite difference approximation
by Kazuki YOSHIDA, Takuya TSUCHIYA

INFORMATION, 4 (2001) 267-277.

1次元の有界区間上で定義された,-(p(x)u'(x))'=f(x), (u(a)=u(b)=0) という方程式を Shortley-Weller 有限差分法に より離散化することを考える.各節点での S-W 有限差分解の 誤差は O(h^2) である.よって有限差分解を区分的1次多項式と 思うと,有限差分解の(超関数の意味での)微分の誤差は O(h) となる.
ところが,各節点において有限差分解の微分(各小区間では 定数である)のある種の「平均」をとると,この値 (recovered derivative あるいは averaged derivative と呼ばれる)は,その節点での真の解の微分値 u'(x_i) の O(h^2) のオーダーの誤差の近似になっていることを, 3重対角行列の逆行列に対する Yamamoto の公式を使い示した. ここでは,区間の分割の一様性を仮定していない. 有限要素法においてオーダー O(h^2) の誤差の recovered derivative を定義する際には,常に区間の 分割の一様性を仮定するので,我々の結果は従来の結果の 本質的な拡張になっている.


[2001-1] An explicit inversion formula for tridiagonal matrices
by Takuya TSUCHIYA, Qing FANG

Computing [Supplement], 15 (2001) 227-238.

3重対角行列の逆行列に対する Yamamoto の陽的公式を, 1次元の有界区間上で定義された -(p(x)u'(x))' + r(x)u(x)=f(x), (u(a)=u(b)=0) という方程式を,Shortley-Weller 有限差分法に より離散化されるときに現れる3重対角行列の場合に拡張し, 逆行列の各成分を表す公式を具体的に決定した.


[2000] Non-differentiable finite element approximations for parametrized strongly nonlinear boundary value problems
by Nami MATSUNAGA, Takuya TSUCHIYA

Advances in Mathematical Sciences and Applications, 10 (2000) 443-465.

Navier-Stokes 方程式を風上型の有限要素スキームを使って 離散化すると,離散化された方程式は Frechet 微分(全微分)可能で なくなります.非線形微分方程式に対する有限要素法の誤差解析は, 通常元の方程式と離散化された方程式の Frechet 微分可能性に 強く依存します.よって,離散化された方程式が Frechet 微分 不可能な場合は,従来の方法が使えません. この論文では,Girault-Raviart の手法 ---- 離散化された方程式が Frechet 微分不可能な場合も「擬微分」がうまく定義できれば, Frechet 微分可能な場合と同様な解析が可能になる ---- を導入すれば, パラメータつき強非線形微分方程式に対する微分不可能な有限要素法の 誤差解析が可能になることを示しました.


[1999] An application of the Kantorovich Theorem to nonlinear finite element anaylsis
by Takuya TSUCHIYA

Numerische Mathematik, 84 (1999) 121-141.

強非線形楕円型微分方程式の境界値問題に対する 有限要素法の誤差について,議論した論文です. 古典的な非線形方程式に対する Kantorovich の定理を, 非線形方程式の解の存在を確かめる道具として使うことにより, 適当な条件が成り立てば,真の解の近傍に有限要素解が 局所的に一意に存在し,またある a priori 誤差評価が 成り立つことを示しました.非線形方程式に対する 有限要素法はいろいろ研究されていますが,強非線形 な場合を,単調(monotone)性の仮定をつけずに扱ったのは, この論文が初めてだと思います(ちょっと自慢).


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